家の気密性が住宅に与える影響とは?気密性能を高める施工と注意点2024.12.23

●住宅に気密性は必要なのか
●気密性能の高い家にはどのようなメリットがある?
●どのような工法で建築されているのか
新築や改築で高気密な住宅を建築しようと考えている方は、家の気密性を高めると住環境にどのような影響があるのか気になるのではないでしょうか。この記事では、推奨される気密測定基準や測定ポイントを中心に、必要とされる理由や気密性の高い住宅を建築する施工方法や平均基準までを解説します。
この記事でわかること
●気密性の高い家のメリットデメリット
●住宅の気密性は施工方法で決まる
●気密性向上のための注意点
気密性能の重要性と住宅設計への影響

近年では住宅の気密性能の重要性を、あちらこちらで耳にするようになりました。
住宅内に隙間があると、室内外の空気が入り混じり、湿度や温度コントロールが上手くいかなくなります。
気密性能が高い家には、どのようなメリットがあり、住宅設計に影響するのでしょうか。
省エネ対策になる
「夏は暑く冬は寒い」このような住宅は気密性能が低いだけでなく、断熱性能が低いため冷気や熱気を住宅内に取り込んでしまいます。
気密性は断熱性と組み合わせて住宅設計されるため、どちらが欠けても十分でない住宅設計では冷暖房を使っても十分な効果を発揮しません。
部屋の温度を快適にするために、温度を上げたり下げたりすれば、暖房器具は必要なエネルギー以上に電力を使います。
私たちが使用する電力は、発電所から送られていますが原料となるのは石油や石炭です。
電気を使えば使うほど、大気中のCO2濃度が増え地球温暖化が進んでしまいます。
気密性能の高い住宅設計は、省エネや地球温暖化対策、また光熱費の抑制にも繋がり、有効的であると言えるでしょう。
室内の温度を安定させられる
気密性能の高い住宅は、寒暖差の影響を受けにくくなるため、冷暖房による室内温度や湿度を快適に保てます。
通常、梅雨から夏にかけては、隙間から冷気や湿気が入り込みやすく、住宅内の湿度が高くなりがちです。
湿度が高くなると住宅内がじめじめして不快になり、ストレスが溜まってしまいます。
冬は冷気で足元が冷えるため、暖房をつけていても暖まりにくくなってしまい、妊婦や高齢者が過ごしにくい環境です。
気密性の高い家は室内が適した換気システムにより温度が一定に保たれ、ヒートショックの予防にも繋がります。
トイレや脱衣所など、冷えが厳しい場所も、気密性能の高い住宅であれば家全体が温度を一定に保つことができ安心です。
断熱効果が高くなる
住宅に使われている断熱材は空気を含んで熱を逃がさないようにできています。
部屋や住宅に隙間があると、どれだけ部屋を暖かくしても断熱性能が働きません。
そのため、断熱材が十分に働くためには、気密性能も考慮しカバーしなければならないのです。
住宅の中でも熱の出入りが大きい場所である窓を断熱性能の高いものに替え、壁・床・天井に断熱材を入れると効果を発揮します。
熱を逃がさないようにすると、適した環境システムにより冬は暖かく夏は涼しい住環境になります。
気密と断熱は交換性があり、どちらが欠けても快適な住宅にはなりません。
壁や天井・屋根だけでなく、床にも断熱材を入れ、隙間のないように気密性を高めれば寒暖差の少ない住宅が完成します。
結露予防
室内の湿気は窓ガラスや壁などの表面に水滴となってあらわれ、壁の内部である断熱材や木材・天井裏などにも侵入し結露を引き起こします。
内部結露は目に見えないため、壁が弱くなってきた、床が抜けたなどで気づき、その頃には
腐食やカビ・シロアリ被害が進んでいる場合もあります。
気密性能は、生活の質を高め快適に過せるだけではなく、大切な家を維持していくためにも重要です。
効率的な換気ができる
部屋を閉め切ったままで過ごしてしまうと、部屋の中にほこりやハウスバストが増えたままの状態になります。
汚れた空気のままで過ごすと、アレルギーやハウスダストを併発するなどの健康被害に繋がるため危険です。
気密性能を高めた住宅では、設計時に効果的な換気ができるような換気口を設置し、快適に過ごせるでしょう。
住宅における気密性能の評価方法:C値とは

気密性能を表すためには、隙間がどれだけ小さいかを表す基準が必要になります。
隙間面積をC値で表しており、数値が小さいほど気密性が高いとなります。
ここからは、C値の計算方法や測定方法について解説します。
C値の計算方法
以前は定められていた基準値ですが、2009年の省エネ改正法によって変更になり、現在は省エネ住宅のC値を国では定められていませんが住宅業界内では1.0㎠/㎡以下であれば十分な気密性があると一つの基準値として推奨されています。
【C値の計算式】C値の計算式
C値(c㎡/㎡)=建物全体の隙間面積(c㎡)÷延べ床面積(㎡)
C値の測定方法
計算だけで正確なC値を導き出すのは難しいため、気密測定器を使って測定を行います。
中間測定(施工中)で測定の結果次第では、気密性能の改修が必要になるため、断熱と気密の施工が終わった後で測定開始です。
換気口は目張りをし、気密測定器を使って屋外に空気を送り出し、室内内外の気圧の差を計測しながら計測すると、正確なC値を算出できます。
住宅の窓や壁の気密性を高める施工方法

隙間風が入りやすい窓や、外気を遮断するための気密性を高めるにはどのような施工方法が良いのでしょうか。
ここでは、気密性向上のための施工方法を解説します。
気密シーリングやテープ
隙間ができやすい窓やドア、配線や配管・床などの接合部は気密テープやシーリング材を使用します。
特に窓や玄関ドア周辺、スイッチ類の周りは気密性が低下しやすい部分のため、気密シーリングやテープでの補強が大切です。
高性能な断熱材
断熱材には種類があり、一般的にはグラスウールやセルロースファイバーなどが利用されています。
硬質ウレタンフォームは使用しやすい吹きつけタイプのため、隙間を埋めるために使われるケースが多くなりました。
住宅メーカーによって使用する断熱材が異なり、厚みがある方が断熱効果は高くなります。
外壁と屋根
外壁や屋根には接合部が多くあり、これを放置したまま施工してしまうと気密性能が低下します。
内部には断熱材を充填し、気密シートや気密テープを使用した気密処理が大切です。
屋根裏にも忘れずに気密シートやウレタンの吹付等を使用すれば、屋根裏の隙間を防ぎエネルギー効率を改善します。
気密性能向上に役立つ資材と工法
気密性能を向上させるには、断熱材などの資材だけでなく工法もポイントになります。
良い資材や断熱材を使っても、それに値する工法でなければ隙間も多くなり効果が半減するからです。
ここでは、気密性能を向上させる資材や工法について解説します。
モノコック構造
住宅は「筋かい」を組み立てて建設されていきますが、モノコック構造は「合板・パネル材」で建物を覆う工法です。
通常の住宅は、外壁の内側が筋かいになっているため、隙間が多く断熱材を使っても気密性能が高くはなりません。
面材・パネル材で、住宅を覆ってしまえば隙間はほとんどなくなるため、断熱テープなどで補強していきます。
吹き付け断熱材
断熱材は種類が多く、一般的にはグラスウールが使われています。
コストパフォーマンスも良く品質的に問題はありませんが、隙間ができやすいため、高気密高断熱の住宅では「発泡ウレタン」などの吹き付け系の断熱材が良く使われるようになりました。
屋根裏などにも使えるため、内側から隙間を少なくする断熱材である吹き付け材を使うと効果が高くなるのです。
気密性の高い窓
断熱材を住宅に張り巡らしても、窓の断熱性能が低いと気密性能は低くなります。
窓が外気の影響を受けると、結露が起きてしまい窓周辺にはカビが生えやすくなり、住宅をむしばんでいきます。
結露は住宅全体の劣化につながるため、予防のためにも断熱性能の高い窓を選びましょう。
窓の断熱性能を高めて、住宅の気密性能が高くなれば冷暖房費用の軽減やCO2排出量削減につながります。
気密性能向上における注意点と対策

気密性能が向上すると、結露予防や省エネ・節電効果などメリットが増えます。
しかしながら、気密性能は永久に続くものではなく、注意すべき点がありますのでチェックしましょう。
気密性能の劣化
気密性能を高める方法としては、窓等の開口部を工夫し隙間を少しでも少なくします。
窓をアルミから樹脂サッシに変更する、玄関ドアを片開きにするなどで、開閉でできてしまう隙間は少なくなります。
有効な方法ではありますが、建物の経年劣化と共に歪みなどが起きてしまうと気密性能は低下するでしょう
定期的なメンテナンスを行い、劣化しやすいパッキンなどを新しいものに交換するなどしてください。
空気がこもりやすくなる
気密性が高い家は空気がこもりやすくなるため、二酸化炭素濃度が高くなったり、ハウスダストが逃げにくくなったりするのがデメリットです。
放置してしまうと、アレルギーや喘息を引き起こし、健康に悪影響を及ぼします。
適切な換気は汚れた空気や埃を外に逃がすだけでなく、新鮮な空気を室内に循環させ生活の質を高めます。
定期的に窓をあけて換気を行ったり、換気システムを導入し空気を入れ替えるような工夫が必要です。
まとめ
昔ながらの木造住宅は調湿性があり、木材のぬくもりを感じられるものでした。
しかしながら、耐震性や気密性の低さから、冷暖房設備を導入しても寒暖差が激しく、結果的に結露によって、カビやシロアリ被害を受けやすいのが欠点です。
家にとって、気密性能は生活の質を高めるだけでなく、建物の寿命を延ばし省エネや健康にも深く関わっているのがわかります。
気密性能と断熱性能を同時に考えるには高度な技術が必要であり、施工精度の高い職人によって、気密性能が高く暮らしやすい家は作られているのです。