気密と換気の関係性とは?換気システムの種類や特徴を解説2024.11.16

●気密と換気は快適な住まいづくりに必要な要素なのかがわからない
●どの換気システムを選べば良いのかがわからない
●高気密住宅にする際の注意点が知りたい
ここでは、快適な住環境を実現するために重要な気密と換気の重要性と関係性を述べます。
また、各換気システムのメリットとデメリット、選び方のコツを述べつつ、高気密住宅にする際の注意点を解説します。
この記事でわかること
●気密と換気の重要性と関係性
●各換気システムのメリットとデメリット
●高気密住宅にする際の注意点と対策
住環境の良し悪しには換気と気密が大切

現代の住宅設計において、快適な住環境を維持するために、高気密化や高断熱化が推奨されています。
なぜ高い気密性能と換気性能が求められるのか、2003年に建築基準法が改正された点からも、住宅設計がどのように変化したのか知っておきましょう。
換気が必要な理由とは
人間が生涯過ごすうえでもっとも多く摂取しているのが空気であり、とくに室内の空気を取り入れる量が多い傾向です。
食事の面で健康に気を遣っていても、室外の空気がうまく循環していなければ空気が汚れ、健康を害する原因になってしまいます。
換気をすれば室内の空気が清潔になり、水蒸気も排出されるため結露やカビが発生しにくくなり、建物が劣化するのを防ぐ役割もあります。
このように、換気すると新鮮な空気を取り込んで室内の空気を清潔に保ち、人間と建物の健康を維持する役割があるため、快適な住環境を実現するには重要な要素です。
換気と気密性の関係性
気密性が高い建物は、隙間風が室内に入り込みにくいのが特徴です。
建築業界では、高気密住宅を判断するため気密性の指標にC値が用いられ、C値が1.0以下を目安に建築が推奨されています。
例えば、100㎥/h排気する換気システムがある建物であれば、100㎥/hの給気口から100%排気されます。
もし、隙間が生じていると本来の給気口以外に隙間から空気が出ている状態になるでしょう。
例えば100㎡の建物に対しC値が5.0㎠/㎡の建物だった場合は、隙間から85㎥/hの空気が入り、本来の給気口からの吸気量が15㎥/hしか入らないです。
つまり、隙間が多ければ多いほど、建物の換気効率が下がってしまいます。
家の隙間の面積が大きくなるほど不規則に空気が入り込んでしまい、給気口から給気される割合が少なくなるのです。
このように換気と気密性は密接に関係しており、C値が低く気密性能に優れていれば、換気システムの効率が計画的に十分に発揮できる住宅と言えるでしょう。
なお、外壁上部・下部や天井、間仕切り壁、配管周り、コンセント周辺は隙間ができやすい場所であり、この隙間を減らすと高気密の住宅へ近づきます。
建築基準法の改正
2003年に建築基準法が改正され、24時間換気システムの設置が義務化されました。
24時間換気システムとは、強制的に室内の空気を入れ替えられる換気設備です。
24時間換気システムが義務付けられた背景には、断熱性や気密性の高い住宅が増え、建材や家具から放出された化学物質が室内に滞りやすい欠点があります。
建築基準法が改正された理由は、ホルムアルデヒドやダニ、カビなどの有害物質の濃度が高くなり、シックハウス症候群やアレルギー症状などの健康被害を訴える被害が増えたためです。
換気システムの種類と各性能の特徴

換気システムは大きく分けて、第1種換気と第2種換気、第3種換気の3つになります。
それぞれの違いは、外気を室内に取り入れる給気と、室内の空気を外に送る排気が機械的におこなわれるかどうかです。
システムごとにメリットとデメリットがあるため、特徴を理解したうえで選びましょう。
第1種換気
第1種換気は給気と排気が機械でおこなわれる換気システムとなります。
換気のコントロールがしやすく、換気効率が優れているのが特徴です。
機器の種類によっては1時間毎に換気する風量が定められているため、部屋の大きさに応じた機器を選ぶとより効率的な換気が可能です。
また、ホコリや塵を除去できる高性能フィルターがついている製品もあり、室内の空気が清浄な状態を維持できます。
更に、メンテナンスする際はフィルター掃除だけで済むため、換気扇やエアコンのように掃除の手間をかけたくない方にも人気があります。
メンテナンスが容易でも、掃除を怠ってしまうと給気するダクトが汚れてしまい、ホコリやカビが室内に充満してしまうため注意が必要です。
デメリットとして、他の換気システムより設備が複雑であり、高価な点が挙げられます。
第2種換気
給気は機械でおこなわれ、排気口から自然に排気される換気システムとなります。
機械的に空気を取り入れることで室内の気圧が外部よりも高くなるため、扉や窓を開けても外部のホコリや塵が入らず、室内が清潔に保たれるのが特徴です。
この仕組みを活かし、医療機関の無菌室や工場のクリーンルームなどの施設に第2種換気が使われています。
なお、一般住宅では第2種換気はほとんど用いられていません。
一般住宅のように気密性が低い建物に第2種換気を用いると、室内の湿気や汚れた空気が壁や屋根裏に入り込んでしまうのが理由です。
冬の寒い時期になると湿気を含んだ空気が一気に冷やされ、結露が発生するリスクも高くなります。
第3種換気
排気は機械でおこなわれ、外気が自然と室内に入る換気システムが第3種換気です。
室内に充満している汚れた空気が強制的に外へ排出される特性から、トイレや浴室、厨房など匂いや水蒸気が多い場所に用いられます。
給気は自然におこなわれるため、第1種換気と比べて換気性能は劣りますが、室内の空気をきれいに保ちつつ設備コストを抑えたい方に適しています。
さらに、ファンが1台で済む点から、初期費用や電気代、フィルター交換代が安くなるのがメリットです。
デメリットは、給気では外気の暑い空気や冷たい空気を取り込み、排気では室内で調整した熱が外に逃げてしまうため温度調節がしにくい点が挙げられます。
湿度調整もできないため、夏に湿度が高いジメジメとした空気も室内に取り込んでしまい、不快に感じやすいです。
温度や湿度を調整するのにエアコンの稼働時間が増えると、エアコンに多大な負荷がかかり、電気代がかさむ可能性があります。
高気密住宅を選ぶ際の注意点

1年を通して快適に過ごせる高気密の住宅を選ぶ方が増えていますが、実際に暮らしてみると後悔するポイントがあったとの声もあります。
後悔しないためにも、高気密の住宅を選ぶ際の注意点と対策を知っておいた方が良いでしょう。
気密性能は永久に保たれるわけではない
気密性能は築年数が経つにつれて、少しずつ劣化していく点に注意が必要です。
気密性能が低下する要因には、玄関ドアや窓の開閉でパッキンが劣化したり、リフォームで隙間ができたりする場合が挙げられます。
木造住宅は構造材の乾燥と収縮により、元の位置から少しずつ動いてしまい、小さな隙間ができるため気密性能が下がります。
気密性が経年劣化するのを見越して、新築の時点で気密性を高くするのが大切です。
もしエアコンの取り付けやリフォーム工事をする場合は、実績が豊富かつ信頼できる業者へ依頼するのがポイントです。
建築コストがかかる
気密性を高める場合は、専用の資材を用いる点から材料費が高くなる傾向です。
また、隙間がないように建築していくのに高精度な設計と施工技術が求められる点からも、他の住宅と比べて建築コストがかかります。
建築費はハウスメーカーごとに異なるため、実際にいくらかかるかは見積りで比較すると良いでしょう。
なお、高気密にこだわると建物の初期費用はかかりますが、高気密住宅であれば光熱費の節約につながる点がポイントです。
内部結露するリスクがある
気密性が高い住宅のうち、きちんと換気されていれば室内の結露が起きにくい傾向にあります。
内部結露とは、壁や床などにグラスウールをはじめとした断熱材を入れるときに、隙間が生じて結露が起きる現象です。
外気が断熱材の隙間から入り込んで、断熱材内部の温度が高い空気と触れて結露が生じてしまいます。
内部結露はカビの発生や、構造材が劣化する原因です。
目視では確認が難しい断熱材の隙間ができるリスクを減らすためには、施工実績が豊富な業者を選ぶのが対策として挙げられます。
空気がこもりやすく乾燥しやすい
高気密は隙間が少なくなる分、屋外と室内の空気の出入りが少なくなり、室内の空気が滞りやすくなります。
ハウスダストやシックハウス症候群で体調を崩さないために、最低でも1時間に1度は定期的に換気するのが望ましいでしょう。
なお、気密性が高い住宅であれば、一酸化炭素中毒になるリスクがある点から、石油ストーブは使えません。
さらに、気密性が高い住宅は、室内が乾燥しやすいデメリットもあります。
室内に加湿器を置いたり、洗濯物を干したりすると室内の湿度が上がるため、乾燥対策としておすすめです。
換気システムの選び方

どの換気システムを導入したら良いのかわからないと悩む方が多いのではないでしょうか。
換気システムを選ぶうえで、4つのポイントを意識して選ぶようにしましょう。
メンテナンスのしやすさ
初期性能を維持した状態で稼働させるには、定期的なメンテナンスが大切です。
もしメンテナンスを怠ってしまうと、フィルターにホコリがこびりついて目詰まりしたり、カビが生えてしまったりする可能性があります。
汚れているフィルターを通過した空気を吸い込むと、アレルギー症状をはじめとして健康を害するリスクが高くなるため、きちんとメンテナンスをおこないましょう。
実際にメンテナンスが不十分な換気システムの換気量を計測した結果、0㎥/hだった事例もあります。
換気システムを選ぶ際は、性能やメーカーにくわえ、メンテナンスや掃除のしやすさも比較するのも大切です。
もし、掃除の手間を省いた生活を求める方は第1種換気より第3種換気を推奨します。
効率よく換気ができるか
窓や扉が閉めきられた部屋では、空気中の細菌やウイルスが室内に溜まりやすく増殖するリスクが高いです。
したがって、室内と室外の空気を定期的に入れ換える必要があり、快適な室内環境にしてくれる換気システムを選べば安心して暮らせるでしょう。
どの地域に住むのか、また建物の種別によっても換気効率が異なります。
換気システムを選ぶ際は、地域や建物に適した換気効率が優れているものを選ぶのがポイントです。
室内の温度への影響
換気するときは外の空気を取り込む必要があり、外気温で室内の温度にどのくらい影響するかを考慮して選ぶのが望ましいです。
夏の暑い時期は暑い空気を取り込み、冬に冷たい空気を取り込んでしまっては快適な住環境とは言えないでしょう。
第3種換気は熱交換機能がなく、第1種換気は熱交換機能のある製品があります。
熱交換機能は、排気する空気の熱で外気を暖めてから室内に取り込む仕組みです。
第1種換気であれば、冬の時期に室内が寒くなる心配がなくなり、快適に過ごしやすいでしょう。
稼働音の大きさ
24時間換気システムは、ハウスダストで室内が汚染されたり、空気がよどんでカビやダニが発生したりしないように、1日中稼働し続けなければなりません。
就寝時も換気システムを稼働させる必要があるため、音が気になりやすい方は稼働音が小さいものを選びましょう。
第1種換気は第3種換気より機械の設置数が多くなる点から、稼働音が大きい傾向にあります。
メーカーによって稼働音の大きさは異なるため、モデルハウスや実際に住まわれている方を訪れてみて確認したほうが安心できるでしょう。
まとめ

換気には新鮮な空気を取り込むため室内の空気を清潔に保ち、人間と建物の健康を維持する大事な役割があります。
換気システムには第1種換気と第2種換気、第3種換気の3つがありますが、一般住宅で使われているのは第1種換気と第3種換気の2つです。
換気システムはメンテナンスのしやすさと換気効率、稼働音の大きさを基準に選ぶと良いでしょう。
しかし、換気の効果を最大限に発揮するためには、建物の気密性が適切に確保されていることが前提となります。気密性が低いと、意図しない場所から空気が出入りしてしまい、計画的な換気が機能しなくなる可能性があります。
そこで、まずは建物の気密測定を行い、現状を正確に把握することが重要です。これにより、効率的でバランスの取れた換気計画を立てることが可能になります。
気密測定を行う場合は、株式会社アペルトに是非お気軽にお問い合わせください。