気密測定で住宅の快適性を高めてみよう!重要性から測定方法、費用まで徹底解説2024.05.13
住宅の気密性能は、省エネ性や室内環境の快適性に大きな影響を与えます。
本記事では、気密測定の重要性や測定方法、高気密住宅の設計・施工ポイントから、測定費用や依頼先の選び方まで、気密測定に関する情報を幅広く解説します。
快適で健康的な住まいづくりのために、ぜひ参考にしてください。
Contents
気密測定の重要性とは?住宅の快適性と健康への影響を解説
気密性能は、住宅の省エネ性能や室内環境の快適性に直結する重要な指標です。ここでは、気密性能の重要性と、それが住宅や健康に与える影響について解説します。
機密性能の重要性
気密性能は、住宅の隙間をできる限り減らし、室内の空気を屋外と分断する性能のことです。
高い気密性能を確保することは、冷暖房効率の向上や結露防止、室内空気質の安定化など、快適で健康的な住環境の実現につながります。
気密性能が住宅に与える影響
高気密住宅は、優れた省エネ性能を発揮します。また、気密性能で重要なのは断熱性能と換気性能との関連で冷暖房費を大幅に削減できることも可能となります。そして、外部からの湿気の侵入を防ぎ、結露やカビの発生リスクを低減、室内温度の安定にも寄与し、ヒートショックのリスク軽減にもつながります。
一方、気密が低い住宅では、熱損失が大きく、結露や温度ムラが生じやすいといった問題が生じがちです。気密性能が住宅に与えるおもな影響は以下の通りです。
・省エネ性の向上:高い気密性能は、冷暖房時の熱損失を抑え、エネルギー効率を高めます。
これにより、冷暖房費を大幅に削減できることも可能です。
・結露とカビの防止:気密性の高い住宅は、外部からの湿気の侵入を効果的に防ぎ、結露やカビの発生リスクを大幅に低減します。
・室内環境の快適性向上:高気密住宅は、室内温度を安定させ、温度ムラを減らします。
また、外部からの汚染物質の侵入を防ぐため、室内空気質を良好に保てます。
このように、高い気密性能は住宅の快適性や省エネ性、耐久性に大きく影響します。気密性能を高めることで、より快適で健康的な住環境を実現できます。
気密性能が高いだけだと健康に与える影響
一方で、気密性を高めただけの住宅では、シックハウス症候群の原因となる化学物質や、ハウスダストなどのアレルギー物質の室内濃度が高まるリスクがあります。
シックハウス症候群の原因となる化学物質による健康被害
・目や喉、鼻の粘膜の刺激症状(目の痛み、喉の痛み、くしゃみ、鼻水など)
・頭痛、めまい、吐き気などの自律神経症状
・皮膚の乾燥、かゆみ、湿疹などの皮膚症状
・慢性疲労、集中力の低下などの全身症状
ハウスダストなどのアレルギー物質による健康被害
・アレルギー性鼻炎(くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど)
・気管支喘息(咳、喘鳴、呼吸困難など)
・アトピー性皮膚炎(皮膚の乾燥、かゆみ、湿疹など)
・結膜炎(目の痒み、充血、流涙など)
そこで重要になってくるポイントは、高気密住宅で健康的な環境を実現するためには、適切な喚起システムの導入と、断熱性能も考慮した総合的な対策が必要となります。
換気と断熱のバランスをとることで、屋外の汚れの侵入を防ぎつつ、室内の空気質を維持できます。
気密測定の方法と工事現場での実施タイミングを紹介
気密測定にはさまざまな方法があり、測定のタイミングも重要です。ここでは、代表的な気密測定の方法や測定の原理と手順、最適な実施タイミングを紹介します。
代表的な気密測定の方法
気密測定の代表的な方法として、減圧法と加圧法があり、一般的には減圧法で実施します。
減圧法は、建物内部を減圧することで、建物内外に圧力差を生じさせ、その圧力差による空気の流れから気密性を評価する方法です。
測定には専用の装置を用い、建物内の空気を外部に吸い出すことで、建物の隙間や穴から外気が流入する状況を作り出します。
減圧法による測定では、建物の大きさ(実質延床面積)に対して相当隙間面積(C値)を算出し、建物の気密性能を評価します。C値が小さいほど、気密性能が高いことを示します。
また、建物内部を負圧にすることで、壁や床、天井などの隠れた隙間や穴を発見しやすくなるというメリットもあります。
減圧法による気密測定は、本来、完成時に行いますが、施工途中の段階で実施し、測定結果に応じた修繕を行うことで、高い気密性能を実現することができます。
気密測定の原理と手順
気密測定は、建物内外に一定の圧力差を作り、そのときの隙間風量を測定することで行います。
測定には、専用の測定器を使用します。家屋の隙間から入る風量と実質延床面積から、相当隙間面積(C値)を算出し、気密性能を評価します。
測定手順は、機器のセッティング、建物の密閉、測定の実施、データの記録などです。
<気密測定の手順>
- 測定器の準備と適切な測定場所の選定:必要な測定器を現場に運び込み、住宅内を見渡し、測定に最適な窓を選定します。
- 測定器の設置とセットアップ:選定した窓に測定器を設置し、送風機と本体をチューブで接続します。
- 換気口のシーリング:測定の精度を高めるため、住宅内のすべての換気口を養生テープで丁寧に目張りします。
- 窓の施錠状態の確認:測定開始前に、住宅内のすべての窓が適切に施錠されていることを確認します。
- 測定の実施:すべての準備が整ったら、測定器を稼働させ、気密測定を行います。
気密測定の最適なタイミングと回数
気密測定は、断熱工事や気密シートの施工が完了した後、内装工事に入る前の時点で実施するのが理想的です。
気密測定は、完成時に実施するのが一般的ですが、断熱工事や気密シートの施工が完了した後、内装工事に入る前の時点で実施することでも利点があります。
施工途中で気密測定を実施することにより、不十分な箇所の特定と手直しが可能になります。測定回数は最低1回ですが、手直し後の効果を確認するために何度か測定を行います。
竣工後の測定は、最終的な性能確認として意味がありますが、この段階では手直しが困難であるため、施工中の測定も実施することを推奨しています。
高気密・高断熱住宅を実現する設計・施工のポイント
高気密・高断熱住宅を実現するには、適切な設計と施工が不可欠です。
ここでは、高気密と高断熱とはどのような状態か、C値やUA値など重要な指標に触れつつ、断熱方法の選択や窓・ドアの施工、換気システムとの連携など、ポイントを解説します。
住宅における高気密とは、住宅の隙間を最小限に抑え、空気の出入りを防ぐことを指します。空気を遮断する性能(気密性)が高い状態が高気密です。
一方、高断熱とは、壁や天井、床などに断熱材を使用し、熱の出入りを抑えることを指します。外気温による室温への影響を受けにくくする性能(断熱性)を高めた状態が高断熱です。
高気密・高断熱住宅の指標:C値とUA値
高気密・高断熱住宅の性能を表す指標として、C値(相当隙間面積)とUA値(熱損失係数)があります。
C値(相当隙間面積)は、住宅の気密性能を表す指標で、住宅の実質延床面積に対する隙間の面積の割合を示します。簡単に言えば、隙間が少ないほどC値は小さくなり、住宅の気密性能が高いことを示します。住宅業界の中では「高気密住宅というなら、C値は1.0を切っておきたい」といわれています。
一方、UA値(熱損失係数)は、住宅の断熱性能を表す指標で、外壁、屋根、床、開口部などを通じて失われる熱量を表します。失われる熱量が小さいほどUA値は小さくなり、住宅の断熱性能が高いことを示します。UA値は、住宅の地域区分ごとに基準があり、寒冷地ほど厳しい基準が設けられています。
気密性能と断熱性能は、相互に影響し合っており、高い気密性能は、断熱効果を高める上で重要な役割を果たします。高気密・高断熱住宅にするためには、C値とUA値の両方を一定の水準以上にする必要があります。
断熱方法の選択と注意点
高断熱を実現するには、断熱材の適切な選択と施工が重要です。おもな断熱方法には、外張り断熱と充填断熱があり、それぞれの特徴を理解したうえで、地域の気候風土や建物の特性に合わせて選択します。
1. 外張り断熱の特徴と注意点
外張り断熱とは、建物の外側を断熱材で覆う方法です。繊維系断熱材や発泡プラスチック系断熱材が使われます。
特徴:
・外壁の気密化が容易
・壁内のスペースを有効活用できる
・結露を抑制できる
注意点:
・比較的、断熱費用は高め
・断熱材の隙間ができないようにする
・経年劣化や地震により外壁がくずれないよう、施工時に注意が必要
2. 充填断熱の特徴と注意点
充填断熱とは、壁や天井、床などの構造体の間に断熱材を充填する方法です。グラスウールやロックウール、セルロースファイバーなどの繊維系断熱材が使われます。
特徴:
・比較的、断熱費用は安め
・厚みのある断熱材を使用できる
・断熱性能が安定しており、経年劣化しにくい
注意点:
・構造部や断熱材との接点に隙間が発生しないようにする
・気密性が低いと、屋外と室内の温度差により結露がおきやすくなる
・防湿性を高めるための施工が必要
外張り断熱と充填断熱は、それぞれ長所と短所があるため、地域性や建物の特性などを踏まえ、総合的に選択することが大切です。両者を組み合わせた断熱方法や隙間をウレタンフォームで防ぐ方法を採用することで、より高い断熱性能を実現することも可能です。
窓や玄関ドアの性能と施工のコツ
開口部である窓や玄関ドアは、建物の気密性能に大きな影響を与えます。
特に窓は外気の影響を受けやすく、窓が熱を伝えると室内の温度を快適に保つのが難しくなります。窓ガラスやサッシの表面に結露が生じるのは、外気と室温との温度差による影響を受けている現象の1つです。
複数枚のガラスにより構成されている複層ガラスは、ガラスとガラスの間に空間を設けて乾燥空気を封入しているものです。水分を含まない乾燥した空気は結露を防ぐとともに熱を伝えにくい性質があり、単板ガラスに比べると高い断熱性能を持ち、冷暖房効率が良く省エネ効果を発揮します。
また、アルミサッシが多くみられますが、気温が低い冬季に触ると窓よりも冷たいでしょう。熱を伝えやすい性質が理由であり、樹脂や木製のサッシのほうが熱を伝えにくい特徴があります。
玄関ドアも住宅内で外気の影響を大きく受けており、夏には暑く、冬には寒いと感じるのは気密性が関係しています。アルミ製や窓の部分が広い、古い引き戸などのときは気密性能が低く、冷暖房効率を悪くしている可能性があります。
サッシやドアの性能(断熱性、気密性)を十分に吟味かつ、施工時には隙間やねじれがないよう注意し、サッシ周りのウレタンフォームによる断熱処理や気密テープの使用も重要なポイントとなります。
換気システムなど付帯設備との連携
高気密・高断熱住宅では、計画的な換気が不可欠です。第1種換気(熱交換型)や第3種換気(排気型)などの機械換気システムを導入し、適切な換気量を確保することが重要です。また、空調設備や給湯設備など、省エネ性の高い設備を選択し、断熱性能と連動させることで、大きな効果が期待できます。具体的には以下となります。
1,エネルギー消費の削減: 省エネ性の高い設備を使用することで、電力やガスなどのエネルギー消費量を減少させることができます。これにより、運営コストの削減や環境負荷の低減が見込めます。
2,快適性の向上: 断熱性能と連動させることで、室内の温度や湿度を安定させることができます。外部の気象条件の変化に対しても、室内の快適性を保つことができます。
3,持続可能性の向上: 省エネ設備と断熱性能の組み合わせにより、建物全体の持続可能性が向上します。エネルギーの使用効率が高まることで、地球温暖化や資源消費の抑制に寄与します。
4,長期的なコスト削減: 高い省エネ性能と断熱性能は、建物のライフサイクル全体においてコスト削減につながります。初期投資は増えるかもしれませんが、運用コストの低減やメンテナンス費用の削減が期待できます。
5,法規制への適合: 多くの国や地域でエネルギー効率や環境負荷に関する法規制が厳しくなっています。省エネ性の高い設備を導入し、施設の法規制適合を達成することが可能です。
これらの効果を最大限に引き出すためには、設計段階から省エネ性の高い設備の選定と、それらを適切に統合することが重要です。建物全体のエネルギー効率を向上させ、快適性や持続可能性を確保するために、総合的なアプローチが求められます。
最近の住宅には従来式の自然換気ではなく、強制的に室内の空気を入れ替える24時間換気システムが設置されているケースが増えています。室内で発生する化学物質のほか呼吸による二酸化炭素などを排出して、きれいな外気を取り入れるとともに、シックハウス症候群やアレルギー症状の予防にも効果的です。
しかし、換気システムや全館空調システムを設置した住宅であっても、外気の影響を受けている室内では機能が損なわれてしまいます。健康管理のうえでも、気密性を高めるようおすすめします。
気密測定の費用と信頼できる業者の選び方
気密測定を依頼する際は、費用や測定業者の選定が重要なポイントとなります。
ここでは、気密測定にかかる標準的な費用や、信頼できる測定業者の選び方、見積もりの取り方などを解説します。
気密測定にかかる標準的な費用
気密測定の費用は、測定機器の種類や建物の大きさ、測定回数、出張費などによって異なりますが、一般的に5万円~10万円程度が相場です。
ハウスメーカーや工務店に依頼する場合、気密測定費用が建築費用に含まれているケースもあるので、事前に確認が必要です。
信頼できる気密測定業者の選定ポイント
信頼できる気密測定業者を選ぶためには、業者の実績やエリア、資格、使用機器の性能などを確認することが重要です。また、説明の丁寧さや、測定結果の報告内容なども判断材料になります。
ハウスメーカーや工務店からの紹介や、専門機関のWebサイトでの検索も有効な選定方法です。
見積もりの取り方と内訳確認のコツ
気密測定の依頼に際しては、複数の業者から見積もりを取り、費用の内訳を比較検討することが大切です。見積もりの内訳には、使用する機器の種類や性能、測定回数、出張費の有無などが明記されているか確認しましょう。
また、測定後のアフターフォローとして、次の内容が含まれているかを確認することが重要です。
・漏気箇所の指摘:気密測定の結果、漏気が確認された場所を具体的に指摘してもらいます。
・漏気箇所の簡易的な補修:気密シートやテープ、ウレタンフォームなどを使用して、漏気箇所の簡易的な補修作業も行ってくれる場合があります。
・測定結果報告書:気密測定の結果は、報告書としてまとめてもらいます。報告書には、測定値(C値、換気回数など)や測定条件、使用機器、漏気箇所の指摘、簡易補修の内容などが記載されます。
まとめ
本記事では、住宅の気密性能の重要性と、それを評価する気密測定について解説しました。高気密・高断熱住宅は、快適で健康的な暮らしを実現し、大幅な省エネにもつながる魅力的な選択肢です。
気密測定を活用することで、設計・施工の質を高め、長期的に満足できる住まいづくりが可能になります。
気密測定は、住宅の品質を確保するために欠かせない工程です。測定結果に基づいて適切な改修を行うことで、高い気密性能を実現できます。
また、気密性能と断熱性能、換気性能のバランスを取ることが、健康的で快適な室内環境を作る上で重要です。
信頼できる測定業者を選び、適切なタイミングで気密測定を実施することが、高性能な住宅を手に入れるための第一歩です。ぜひ本記事を参考に、快適な住まいづくりにお役立てください。