気密測定の基準値とは?測定方法と性能を高める施工方法やデザインを紹介2024.10.24
● 気密性の高い家を建てたいけれどどうすればいい?
● 気密性能や気密測定の基準について知りたい
● どれくらいの気密性が必要なのか知りたい
高気密な住宅を建築しようと考えている方へ、推奨される気密測定基準や測定ポイントを中心に、必要とされる理由や測定のポイント、気密性の高い住宅を建築する施工方法や平均基準までを解説します。
この記事でわかること
● 高気密の住宅に必要な気密測定の基準とは
● 気密測定の基準による測定で注意するポイント
● 気密性の高い住宅の施工方法やデザイン
気密測定の基準が家づくりに重要な理由
気密測定の基準値はハウスメーカーや工務店で目指した家の気密性能を数字で表し、適した施工方法や改善点を定めるために利用されるものです。
ここでは、気密測定の基準値が必要な理由について解説します。
寒暖差を無くし快適な空間作り
建物の気密性が低いと、季節によって室内の温度差が大きくなり不快指数が高くなります。
梅雨時期は部屋の中がじっとり、夏は蒸し暑く冬は隙間風が入ると足元から冷えますから、落ち着いて生活ができません。
冷暖房設備の作り出す快適な温度の空気が隙間から外に漏れ、代わりに蒸し暑い空気や冷気が室内に流れ込んでくるのが原因です。
また、気密性が低い・隙間が多い住宅では、熱は天井に昇り屋根から抜けていき、冷たい空気は床下から入り込みます。
冬場は壁の中の結露によって湿度が変化するため窓には水滴がたまり、部屋は温まらずじめじめと不快指数も高まります。
このような不快感の改善にも、気密測定基準が重要といえるでしょう。
内部結露の予防
結露は外気と室内の寒暖差で起きてしまう現象で、窓に水滴がつくのも結露の1つです。
内部結露は湿気を含んだ空気が外壁と室内壁の間に起こる現象で、放置してしまうとカビや資材の腐食を誘発してしまいます。
住宅の寿命を短くするだけでなく、空気中に浮遊するカビが人体に入りこむと健康被害を引き起こすケースもあるので注意しましょう。
内部結露によって外壁にも影響がおよぶと、外壁塗装が剥がれてしまうだけでなく、住宅の土台にも影響を与えてしまいます。
結露によって壁の断熱材が剝がれたりずれたりすると、断熱効果も失われていきます。
内部結露を予防するためにも、建物の気密測定をおこない、適切な数値にする作業が大切です。
換気システムの正常化
家の空気を入れ替えるシステムは、健康効果を高めるうえで欠かせません。
2003年の建築基準法改正により、新築住宅には24時間換気システムの導入が義務化されました。
昔ながらの日本家屋は通気性を重視した資材や施工方法でしたが、新しい建材の普及により、断熱性と気密性が高い家が求められています。
しかしながら、建材などに含まれる化学物質や二酸化炭素が室内にとどまりやすくなっており、アレルギーなどを引き起こす危険性が高まっています。
24時間換気システムは、高気密な住宅でも健康被害を発症しないように、自動で換気できる装置です。
換気システムが正常に働くようにするためにも、気密測定を行い、気密性能を把握することが重要になるでしょう。
気密測定の方法と測定時に注意すべきポイント
専用の機械を使って住宅の隙間面積を計算するのが、気密測定です。
ここでは、どのように測定するのか、注意するポイントを紹介しましょう。
「中間気密測定」と「完成気密測定」を行う
気密測定には完成気密測定と中間気密測定があります。
完成気密測定は、気密性能がどれくらいの数値かを把握するために完成時に行うものです。
想定していた数値が出なかった場合には、家が完成しているため修繕方法の選択肢は少なく、作業も簡単にはできません。
施工途中の中間気密測定では、数値が大きくても、隙間がある場所を特定しながらボードやクロスを張るなどして気密性を、目標値に近づける作業が可能です。
断熱材を使っても、粗悪な施工によって気密性が損なわれてしまうと数値は高くなります。
完成時に理想的な数値にするためにも、中間気密測定は欠かせません。
住宅を長持ちさせるためにも複数回測定し、適切な数値の把握が重要です。
開口部はすべて塞いで行う
測定は建物の隙間がどれくらいあるかを調べるため、玄関はもちろんですが、窓も鍵をかけた状態で測定します。
特に、中間測定時に注意すべき点は玄関が仮設の場合や玄関下の隙間があることに注意しましょう。適正な目張りが必要となります。
24時間換気システムに使用する換気口も塞ぎますが、場合によっては外からも目張りを施すほどです。
測定機では室内の空気を外に吐き出し、外との圧力差と風量を測定します。
測定器が止まった後は、延べ床面積を入力し気密測定値であるC値が割り出されます。
必要な箇所は手直しする
C値は0に近いほど良いとされていますが、実際に0にすることはできません。
隙間特性値を確認し、どこかに大きな穴や隙間がないかを調査し、必要に応じた手直しをします。
気密性C値は、国の省エネ基準でも適合義務もないため説明義務もありません。
施工者の技術力によって気密性に差がでますし、施工や手直しに時間がかかります。
費用がかかるため、積極的に推奨するハウスメーカーや工務店も少ないようですが、十分な気密性がなければ計画的な換気ができなくなります。
省エネ効果を高めるためにも、気密測定をおこない必要な箇所を手直ししましょう。
気密性能向上の施工方法と建物デザイン
気密性向上にこだわる家を施工するためには、建物の隙間から外気が侵入するのを防ぐための施工が重要になります。
ここからは、機能性向上のための施工方法や建物デザインについて解説します。
パッシブデザインの家
省エネを考え冷暖房設備をできるだけ使わずに過す設計技術がパッシブデザインです。
気密性や断熱性の向上はもちろんですが、通風や採光・蓄熱などに自然エネルギーを利用して、節電効果を得られるようにします。
日当たりの良い家は日射熱を活用できるうえ、蓄熱性を高めて寒い季節の冷暖房設備の使用量をできるだけ控えられます。
太陽光を取り入れる日射熱の利用は、夏に室温が下がらない弊害も引き起こすため対策を施すのもパッシブデザインで可能です。
真夏の太陽を遮るには外壁には深いひさしを設置し、冬の日差しの確保には西日が入りにくい小窓や掃き出し窓を設置するデザインが定着しています。
高所に窓を設置すると通風性を高める効果もあり、天井にシーリングファンを導入すれば空気を循環させて室温を一定に保ち、さらに冷暖房効果を高められるでしょう。
モノコック構造
昔ながらの筋かい構造材とは違い、構造用合板などの面材やパネル材で建物を覆う施工方法です。
柱・梁で建物を支える在来工法は、間取りの変更がしやすいためリノベーションで生まれ変わりますが、気密性は低くなります。
モノコック構造は壁で建物を支えるため柱が少なく、空間を広く使えるのが特徴です。面と面の隙間を最小限に抑えられるため、気密性・断熱性を高められます。
また、水平方向の揺れにとくに強く、耐震性が高いのも特徴であり、耐火性や遮音性も優れているため安心して居心地の良い生活ができるでしょう。
断熱性能を高める工夫
気密性を高める工夫は、建物内の断熱効果をアップするのと同じ意味があります。
通常はグラスウールを資材に埋め込んだり貼り付けたりしますが、隙間ができてしまい気密性を保てません。
「発泡ウレタン」などの吹き付け系の断熱材は屋根の裏面にも施工できるため、気密性を高くする際に利用頻度の多い資材です。
家づくりの仕上げ工程において建物の内壁に壁紙クロスなどを貼り付ける際にも、隙間をなくす作業が大切です。
このような細かい工夫も気密性の向上に欠かせないため、断熱性能を高める施工がおこなわれているかを確認しましょう。
一般的なC値基準と目指すべき性能
気密性能はC値基準で表され0に近いほど、断熱効果も高くなります。
しかしながら、その数値に近づけるためにはコストだけでなく時間もかかるため、一般的なC値の基準と目指すべき性能を抑えておきましょう。
一般的なC値の基準
C値 | 総相当隙間面積(αA) | |
一般住宅 | 2.0㎠/㎡ | およそ折り紙サイズ |
推奨する気密住宅 | 1.0㎠/㎡ | 10㎝角のコースター |
高気密住宅 | 0.5㎠/㎡ | 野球ボール |
※床面積100㎡(約30坪)で比較
これはあくまでも住宅業における目安ですが、気密性能を意識しないと隙間が多く気密性が低い様子がわかります。
気密住宅の施工実績のある会社であれば、追加費用になりがちな施工をせずともC値を1.0以下にする工夫も可能です。
気密性の高い家を目指す方は、工務店やハウスメーカーを選ぶ際に、過去の実績を参考にしましょう。
C値は0.7~0.5前後が推奨されている
数字だけで考えてしまうと、C値を少しでも小さくするのが理想です。
気密が高くなると断熱効果も高まり、室内の寒暖差がなくなるなどのメリットがあるものの、強い負圧状態が継続すると弊害をもたらしてしまいます。
C値が1.0でも十分な気密性があり快適に過せますが、玄関ドアや窓は頻繁に開け閉めするため、少しずつ歪みが生まれて隙間ができます。
家は長年利用するものであり、経年劣化による気密性の低下も考慮しなければならない点から、C値は0.7〜0.5前後が好ましいとする根拠になっています。
気密性を重視するなら窓の性能を考えてみる
気密性を重視するのであれば、外気の影響を受けないような施工が必要となります。
外気の出入りが大きな窓の断熱性能を高めれば、冷暖房の負担を軽減し省エネ対策にもつながるでしょう
アルミサッシは、断熱性が低く熱の損失も大きいため、気密性の高い家作りには不向きです。
C値基準0.7〜0.5前後にするのであれば樹脂サッシや木製サッシ、断熱性能に優れた複層ガラス、あるいはFIX窓等の活用で窓の性能を高めることもお勧め致します。
まとめ
気密測定基準の数値は決められていませんが、C値は0.7〜0.5前後が好ましいです。
断熱材の種類や窓の性能で気密性が大きく変わります。
また、施工方法やデザインを工夫すれば省エネ効果も得られるでしょう。
気密測定を行う場合は、月間250棟以上の測定を行っている株式会社アペルトにぜひお気軽にお問い合わせください。