気密性能を表すC値とは?気密測定で住宅の快適性を確保!2024.07.25

- 気密性能の高い住宅は何が優れているの?
- 気密性能を示すC値ってなに?
- 気密性を高めるための施工について知りたい
ここでは、これからマイホームを購入・建築する予定の方に対し、気密性能の重要性や気密性能を表すC値とは何か、建設会社はどのような取り組みをしているのかをご紹介します。
この記事でわかること
- 気密性能の高い住宅が実現する快適な暮らしの内容
- C値が持つ役割や算出方法
- 気密性能向上のために建設会社が取り組んでいる内容
高い気密性能を実現するC値の重要性

気密性能の高い住宅は室内の適切な換気システムにより、温度や湿度がコントロールされています。
建物の室温が一定になれば、部屋を移動しても寒暖の差を感じることなく快適に過ごせます。
このように、気密性とは快適性を高め暮らしやすい環境作りには欠かせないものであり、住宅の機能にも影響を与える機能です。
高価な建材を使用して建築した建物であっても、隙間があると気密性能が低くなり外気の影響を受けやすくなります。
では、気密性が高い・低いはどのように調べ評価するのでしょうか。
住宅の気密性能を可視化するうえで、C値と呼ばれる数値が用いられています。
C値が小さいほど隙間が少なく、気密性能が高い住宅であると認められるため、建築基準として重要な意味を持っていると言えるでしょう。
ここでは、建物の気密性能が高いとどのようなメリットがあるのか、その重要性をご説明します。
冷暖房効率の向上と光熱費の抑制

気密性が低い建物には隙間が多く、外気が室内に出入りするため、冬は寒く夏は熱気が侵入し蒸し蒸しと不快感が強くなります。
これを改善するためにエアコンを使いますが、隙間があると効率が悪くなり、思いどおりの室温にするまでに時間がかかるため光熱費が高騰しがちです。
さらに、結露やカビが発生しやすく、害虫などが侵入しやすいという問題もあります。
昔ながらの日本家屋は、自然換気がしやすい点をメリットとしていましたが、地球温暖化による異常気象や温度は家にダメージを与えてしまいます。
また、カーボンニュートラルに向けた「省エネ」の意味でも、気密性が低い建物はデメリットしかありません。
一方、気密性能の高い住宅は外気の影響を受けなくなるため、建物全体が一定の室温を保ちます。
エアコンやストーブをパワー全開で使ったり長時間運転させたりする必要もなくなります。
快適な室内温度を維持する際のエアコンやストーブの冷暖房効率が向上するのにともなって光熱費の抑制にもつながり、節約の効果が期待できるでしょう。
家族の健康を守る
気密性が低いと隙間風が入るだけでなく、水回りはジメジメと湿度が高くひんやりとします。
寒い時期はリビングから離れると温度が急激に低くなり、冷えた廊下を歩いてトイレに行かなければならなかったり、脱衣所やバスルームが寒いとどうなるでしょう。
ヒートショックや冷えによる体調不良など、深刻な健康被害が起こってしまいます。
室内の温度と湿度が安定した住宅は、ヒートショック予防だけでなく、花粉やほこりなど外部からの侵入を抑え、シックハウス症候群やカビなどによる健康被害を予防します。
気密性と断熱性の健康を守る効果を考えると、計画的な換気をする設備が不可欠なため、24時間換気システムの稼働が必須です。
汚染物質の防御
外気には花粉やPM2.5など人体に好ましくない物質が存在しており、呼吸器疾患の原因になる可能性があります。
気密性能が低い住宅では隙間からの外気の出入りによって、アレルゲンや化学物質などが室内に入り込んでしまいます。
24時間換気システムは2003年以降の住宅には、建築基準法により設置が義務付けられました。
自然な換気がしにくい気密住宅は、この換気システムによって室内の有害物質を排出し、快適な空間を維持します。
花粉や黄砂、PM2.5などに対応したフィルターにすると、さらなる効果が見込めるでしょう。
防音効果
隙間が少ない気密性住宅は隙間がほとんどないため、室内の音が漏れにくくプライバシーが守られています。
騒音トラブルは、精神的なストレスを与えるだけでなく、相手との感情的な対立を生み出す社会問題です。
隙間をできるかぎり少なくする・高性能な断熱材を使うなどの工夫で音を吸収し、幹線道路沿いなど、音が気になる立地条件でも静かに生活できます。
C値が小さい住宅は遮音性能や防音効果が向上し、快適な暮らしをおくれるでしょう。
カビの予防
気密性の低い住宅は屋根や壁などから暖気や冷気が入り込み、室外と室内の温度差によって結露が発生しやすい傾向があります。
窓ガラスやサッシ・壁などに発生する外部結露は、気密性の低い住宅に多い現象ですが、
天井裏などで発生する内部結露は、気密性が高い家で起こりやすい傾向にあります。
気密性が高い家は、温度が一定に保たれるメリットと共に、換気が不十分だと内部結露が起きやすいデメリットがあるのです。
これを解決するために、換気システムを導入しますが、それだけでは十分とはいえません。
内部結露を防ぎカビを予防するためには、高気密高断熱の家を建てられるスキルが必要です。
施工会社が高気密高断熱な住宅を建てるスキルを持っていてこそ、カビの予防につながります。
高気密な住宅は外気が入り込む隙間がなく、結露やカビ、ダニの発生予防に効果が期待できるでしょう。
建設会社に対する信頼感
気密測定を行うには知識と技術が必要であり、取り組んでいる建設会社は限られています。
講習などを経て技術を習得した会社は、ホームページなどで気密測定の実績などを掲載するなど気密住宅の重要性を積極的にアピールするのが一般的です。
住宅を建てる際に気密測定を行うのは、気密性能を確保するうえで大切な取り組みであるとともに、建設会社としては技術力の証明になります。
したがって、気密測定を実施している建設会社は、自社の建築技術に自信がある1つの証といえます。
高気密の基準となるC値とは

気密性能の状態を確認するうえでC値は数値により可視化できる重要な役割を担っており、ここではC値とは何かについてご説明するので参考にしてください。
C値とは?
C値とは住宅の隙間を表す数値であり、隙間が少ないときには小さな数値になります。
建築会社は、隙間がなく気密性が高い住宅を建てるよう取り組みますが、完成した住宅の気密性を確認するのは見た目には困難な為、気密測定は専用の装置を用いて基準に従って実施し、C値を計測します。
住宅を建設する際に気密性能を確保するうえで、発注者と建設会社の間でC値の目標値を設定して取り組むのが理想的です。
C値の求め方
C値は、建物全体の総相当隙間面積を実質延べ床面積で除して求める数値です。
例えば、総相当隙間面積は延べ床面積が150㎡の建物でC値が2.0㎠/㎡のときには、建物全体のうち隙間が300㎠になります。
家全体に圧力をかけたうえで専用の装置を使って気密を測定するのがC値を求める作業方法であり、机上で算出するものではありません。なお、測定作業は気密測定技能者が行います。
室内を丁寧に目張りしてから装置を稼働させて室内の空気を抜くと、隙間が少ないほど室外から流入する空気量が少なくなって室内の気圧が下がります。
この時、室内の気圧と屋外の気圧との差によって、隙間量を示すC値が算出される仕組みです。
気密測定は、工事が竣工したときだけではなく、断熱(気密)工事が終わったあとにも行うのがおすすめです。断熱工事が終わった後の測定数値が目標に達しなかった際には、隙間や穴を見つけ出して工事の是正により目標値になるよう取り組みます。
C値の理想的な基準値

高気密状態にあると言えるC値の数値について、国では規定していません。
ただし、気密性を重視した住宅の建設に取り組んでいる建設会社などの多くが、住宅業界ではC値が1.0㎠/㎡以下になるよう一般的に目標を設定しています。
延べ床面積150㎡の住宅でC値が1.0㎠/㎡時の隙間は150㎠となり、葉書よりも少し大きめな隙間がある状態です。
したがって、高気密住宅を名乗るうえで各社が基準を厳しくするようになり、0.6㎠/㎡以下を目標に設定している会社も少なくありません。
北海道などの寒冷地を除いた地域の省エネ基準値はC値が5.0㎠/㎡未満でした。この数値の住宅では、24時間換気システムが設計通りに機能しません。
高気密な住宅を手に入れるには、できる限りC値が1.0㎠/㎡未満の測定結果を求めるのが理想と言えます。
C値の低下
気密性能は建物の経年劣化にともなって少しずつ機能が低下し、C値の数値が大きくなっていきます。
どんなに高性能な住宅であっても、築10年を経過すれば玄関ドアや窓サッシの歪みや隙間
などはできてしまうものです。
外壁や屋根などの色あせが目立つようになるなど、メンテナンス時期といえるでしょう。
したがって、新築を建てる際は、将来的に気密性能が劣化するのを見越したうえで気密性能の目標値を高く設定します。
定期的なメンテナンスで、気密性をキープする点も忘れずにいたいものです。
なお、リフォームやエアコンの取付工事などでも隙間ができる可能性があり、施工業者に注意してもらう必要があります。
気密性能を高めるための施工・設計ポイント

気密性能の高い住宅を建てるには、施工・設計に対する高い技術力が必要です。
ここでは、高い水準のC値を設定するうえで取り組まれているポイントを紹介します。
防湿気密シートの施工
気密性を高める工事では防湿気密シートが重要な建材の1つであり、ロール状のものを壁面や天井面に丁寧に貼り付けていきます。
シートのつなぎ目部分に隙間ができないよう気密テープを用いてつなぎ、その上から下地の石膏ボードなどで止めます。このときの施工技術が高い気密性を生み出すポイントです。
また、床面の気密工事では、下地材のつなぎ目部分を気密テープやウレタン処理で丁寧に張り合わせて隙間を遮断します。
詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。「気密測定で住宅の快適性を高めてみよう!重要性から測定方法、費用まで徹底解説」(←リンクをつける)
断熱と気密をセットで考える
気密性能を上げるためには、隙間を少なくする工夫が必要です。
そのためには、断熱と気密をセットで考えた設計が重要なポイントになると考えましょう。
隙間が生まれないような設計に高断熱材を使い、つなぎ目をできるだけすくなくする工夫をします。
コンセントや配管周りは隙間ができやすいため、特に注意してコーキングなどの処理が重要になるでしょう。
気密だけを考えるのではなく、断熱材をどう使うのか・何を採用するかでも違ってきます。
性能が高くなれば費用もかかりますが、長期的に住宅の機能を下げない点からも、バランスを考えた施工が必要です。
断熱材の利用
内断熱材は一般的にグラスウールが使われていますが、気密性を高めるためにはセルロースファイバーやウレタンフォームなどの吹き付けタイプの断熱材がおすすめです。
断熱効果が高いだけでなく、小さな隙間やカーブを描いた部分も防げるのがポイントで、高い技術力を必要とする施工です。
隙間なく吹き付け断熱材を使えば、納得のいくC値を導き出せるでしょう。
窓やサッシの工夫
ドアやサッシで隙間を作らないよう、引き違い戸や片引戸ではなく片開きドアやFIX窓を採用するとよいでしょう。
外気の出入りが激しい窓には気密性の高い樹脂窓を用いるとともに、窓の数を少な目にするのがおすすめです。
なお、アルミサッシは熱を伝えやすく、樹脂や木製のサッシのほうが熱を伝えにくい特徴があるため、適しています。
開け閉めが多くなる窓は、複層ガラスを選ぶのがおすすめです。
防犯性が高いことからも注目されていますが、高い断熱効果が期待できます。
熱を伝えにくい複層ガラスは結露予防にもなり、気密性能だけでなく省エネ効果も上がります。
施工後の気密測定を必ず実施
気密測定は施工完成後に行うのが一般的で、設計通りの気密性能が確保されているかを測定し、補修します。
結露や省エネ・断熱効果を維持するためにも、必ず行いましょう。
気密測定に関してはオプションとなる施工会社が多く、1棟1回あたり5万円前後の費用が目安で、全棟気密測定を実施しています。
オプションのない建設会社や工務店の場合は、専門機関への依頼をおすすめします。
高気密住宅の実績が多い施工会社を選ぶ
気密性能の高い住宅を施工できるハウスメーカーや工務店も増えていますが、すべての会社が同じ技術力を持っているわけではありません。
C値を低くするための施工技術はもちろんですが、実績があり満足度が高い住宅を建築しているかが重要です。
経験が豊富だから、気密性能の高い住宅を建てられるわけではありません。
お客様の満足度が高く、メンテナンスやアフターサービスまでもが徹底している会社を探しましょう。
ハウスメーカーや工務店での気密性能対応

高い水準でC値の目標を設定する建設会社には、気密測定の知識の他、気密工事を施工する優秀な職人が求められます。
目標達成に対する意識が高い職人一人ひとりによる丁寧な作業が、気密性能の高い住宅づくりに欠かせません。
技術力が高い建設会社は、優秀な職人の育成などにより目標値の実現に努めています。
桧家住宅(Z空調)
全館空調「Z空調」の家により、一年を通して家の温度を快適に保ち、ユーザーから高い評価を得ています。
「Z空調」は家の中のどの部屋も快適な室温が維持できるとともに、身体にも家計にも優しい点がユーザーに喜ばれている理由の1つです。
また、キッチンや収納家具、洗面化粧台などは上質で快適な暮らしが実現できるようデザイン性や利便性を高め、独自に開発したオリジナルの商品ブランドを提供しています。
ヤマト住建
窓からの熱損失を抑える樹脂サッシの他、家全体を断熱材で包み込む外張り断熱を採用するなど、断熱性能にこだわった家づくりを進めています。
断熱環境の改善による快適性の向上だけにとどまらず、急激な温度差がきっかけとなって脳出血などの疾患を引き起こさないよう、健康状態にも目を配っている点がポイントです。
日本の住宅を世界基準にするのを目指し、長寿命で広くて安い、高性能で資産価値の高い家づくりを追求しています。
アイ工務店
屋根・壁・床・天井の高断熱化と高い気密性能で快適な住まいを実現するため、屋根裏は遮熱ボードに発泡ウレタンを吹付、外壁は屋外側にフェノールフォーム張り、屋内側に発泡ウレタン吹付のダブル断熱を使用しています。床下は高性能ガラス繊維を敷きこむことで、外気の熱い寒さに影響されにくく、従来より少ない光熱費で冷暖房が利用できる、高気密、高断熱仕様を採用しています。
ミサワホーム
独自のテクノロジーに基づき、地震などの外力を分散して受け止める「木質パネル接着工法」による「モノコック構造」を採用するなど、安全面に重きを置いているのが特徴です。
建築工程の各過程で、業界トップレベルの厳しい基準を設定し、末永く快適に暮らせる住宅の提供に努めています。
新昭和(ウィザースホーム)
高断熱住宅への更なる高みを求めた新たな取り組みとして、「ダブル断熱仕様」を販売しています。2×6工法の壁厚いっぱいに発泡ウレタンを施工した従来の断熱仕様に加え、壁の外側に50mmのネオマフォーム断熱材を施工する「ダブル断熱仕様」では気密性も高めるため、「超・気密施工」も実施。施工時に隙間ができやすい、サッシ周辺部や部材の接合部などに発泡ウレタンを充填し、住まいの気密性を高めるよう努めています。
まとめ
ここまで気密性能の重要性や気密性能を表すC値について、また建設会社の取り組みなどをご紹介させていただきました。
C値とは気密性能を可視化するうえで用いられる指数であり、高気密に重きを置く建設会社は目標を0.8㎠/㎡以下を目安として定めて取り組んでいます。
気密性能の高い住宅を購入すると、冷暖房効率の向上や光熱費の抑制、汚染物質の防御などに優れた快適で安全性の高い暮らしを手に入れられます。
施工にあたってC値の目標を高い水準で設定し、知識と技術をもった信頼感のある建設会社に依頼して、素敵なマイホームで快適にお過ごしください。